「仲介や空き家バンクで買い手がつかない」「何年も売れず、固定資産税だけがかかり続ける」
空き家の買取相談をお受けしていて、このようなお悩みをお聞きする場面が増えていると感じます。
地方の古くなった実家や昔に購入した別荘地、土地でいえば地方の山林や使わなくなった農地など、「売る・貸す・使うといったことができず、管理の時間的・金銭的コストばかりが発生する」という現実に直面する方が増えていることは明白です。
不動産は資産であるという常識は、過去のものになりつつあります。 今回の記事では、売却や処分が難しい不動産が増えている背景を振り返ったうえで、そのような不動産の所有者が今の時代に持つべき考え方や、対処方法を解説します。
売れない不動産が増えている背景
かつては「持っていれば価値が上がる」という前提のもとに土地・別荘・郊外の分譲地などが購入されてきましたが、現在は状況が大きく変化しました。
負動産が増加している背景には、少子高齢化や人口減少といった社会問題が深く関わっています。
人口減少と都市部への集中
地方や郊外では人口が減り続けており、さらに若年層は利便性の高い都市部に集中するため、家を買いたい・借りたいという人そのものが不足しています。
相続による「空き家」の急増
親の世代が亡くなり、実家を相続する人が増えています。
しかし、相続人がすでに自分の家を持っている場合、使い道のない実家がそのまま放置され、売りに出されても市場に溢れかえる結果となっています。
古い・不便な物件が流通しない
売れ残る不動産の多くは「最寄り駅から遠い」「築年数が古く、耐震基準や断熱性能が現代の基準に合わない」「現代のライフスタイルに間取りが合わない」といった、買い手のニーズを満たせない条件を抱えています。
上記のような問題を抱えている物件は、単に価格を下げれば売れやすくなるものではなく、需要そのものが無いことに課題があります。
「家が余っているのに、人が減り、現代のニーズに合わない古い物件が増えていること」が、売れない不動産が急増している本質的な原因といえるでしょう。
国での引き取りも難しい負動産の現実
2023年4月より、相続した不要な土地を国に引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。一見すると、売れない土地を処分する切り札のように思えますが、この制度を利用するには厳しい審査基準をクリアしなければなりません。
国は「管理に多大なコストがかかる土地」や「将来的に国が活用できない土地」の引き取りを拒否する傾向にあります。そのため、手放したい土地が制度の対象外となるケースも決して少なくありません。
相続土地国庫帰属制度の厳しい審査基準
相続土地国庫帰属制度には、申請が却下される明確な「却下事由」が定められています。具体的には、土地の上に建物が存在していたり、抵当権などの担保権が設定されていたりする場合、原則として引き取りは認められません。
以下に、審査において却下されやすい主なケースを整理しました。
| 審査項目 | 承認されない主なケース |
|---|---|
| 建物・工作物 | 建物が建っている、または古い工作物が残置されている状態 |
| 担保権・権利 | 抵当権が設定されている、または賃借権などの権利が付着している状態 |
| 土地の状態 | 通路として利用されている、または他者の立ち入りが制限できない状態 |
| 汚染・廃棄物 | 土壌汚染がある、または廃棄物が埋設・放置されている状態 |
制度の詳細は、法務省の相続土地国庫帰属制度のページにて確認できますが、申請には負担金(最低20万円)も必要です。審査の結果、引き取りが拒否された場合でも、この負担金の一部や申請にかかった実費は戻ってこないリスクがある点に注意が必要です。
土地の状態や境界線が不明確な場合
制度の審査以前に、土地の境界線が不明確であることも大きな障壁となります。隣地との境界が確定していない土地は、所有権の範囲が曖昧であるため、国としても引き取り後の管理が困難と判断されます。
境界を確定させるためには、土地家屋調査士に依頼して測量を行う必要がありますが、これには数十万円から百万円単位の費用がかかることも珍しくありません。また、隣接する土地の所有者と境界の認識で争いがある場合、解決までに長期の交渉や裁判が必要になるケースもあります。
「負動産」として放置されている土地の多くは、こうした境界問題や老朽化した空き家、ゴミの不法投棄といった問題を抱えています。これらの問題を解決してからでないと、国への引き取り申請すら受け付けてもらえないのが現実です。
「そのうち何とかなる」という楽観が危険な理由
相続などで所有することになった家や土地に対して「すぐに売れなくても、いつか何とかなる」と先送り判断をするケースが非常に多いと感じます。
しかし、不動産は時間の経過によって勝手に価値が回復するものではありません。 先述したように人口減少と地方物件の需要低下という状況の中では、よほど都心近くでもなければ、物件の売却可能性はさらに下がっていく可能性が高いでしょう。
また、管理が行き届かない物件は、建物の劣化・雑草や倒木の問題・火災・不法投棄などのリスクが増大し、売却が難しくなるほか、国の制度で引き取ってもらう要件を満たさなくなるといった悪循環に陥ります。
不動産をめぐる法制度も、所有者にとって厳しい方向へ変更されています。 相続登記が義務化されたことで、相続した不動産を放置し続けることは法律違反となるリスクがあります。
また、管理状態が著しく悪い空き家については、行政から「管理不全空き家」や「特定空き家」として勧告を受け、固定資産税の住宅用地特例が解除されるケースも増えています。 「何とかなる」と先送りにしている間に、税負担の増大や法的トラブルのリスクが雪だるま式に膨らんでいくのが、負動産の現実です。
10万円でも売れない負動産の処分に向けた対処法
「売れない」と諦める前に、現状を打破するための具体的な手段を検討しましょう。負動産を所有し続けることは、固定資産税の支払いや管理責任といったリスクを抱え続けることと同義です。以下に、状況に応じた主な処分方法を整理しました。
市場価格や物件の状態を現実的に見た売却
「10万円でも売れない」という事実は、その物件に市場価値がない、あるいは管理コストの方が上回るという市場からの評価です。 この場合、利益を得ることを目的とせず「手放すこと」を最優先に考え方を切り替える必要があります。
具体的には、0円に近い価格で譲渡する、あるいは解体費用や仲介手数料を負担してでも買い手を見つける方法です。 空き家や訳あり物件を扱う買取業者に対して「売却益は不要なので、とにかく手放したい」という意思を明確に伝えることで、積極的な営業活動を引き出せる可能性があります。
相続土地国庫帰属制度を活用
相続した土地が不要である場合、2023年から始まった「相続土地国庫帰属制度」を利用できる可能性があります。この制度は、一定の要件を満たした土地を国に引き取ってもらう仕組みです。
ただし、制度を利用するには審査手数料や、土地の面積に応じた負担金の納付が必要です。 また、建物が建っている土地は対象外であるため自費での解体が必要があり、担保権が設定されている土地などは対象外となります。
空き家バンクの活用
空き家バンクは、空き家を売りたい・貸したい所有者と、移住や定住を希望する利用者をマッチングする公的なシステムです。
自治体が仲介に入るため信頼性が高く、地域によっては補助金が出るケースもあります。 まずは物件が所在する市区町村の窓口に問い合わせ、登録が可能かを確認しましょう。
所有者にとっては、不動産会社が取り扱わないような物件でも、行政のネットワークを通じて買い手が見つかる可能性があります。
不要な家や土地の買取業者へ相談
市場売却や公的な制度が利用できない場合、最終手段として「不動産引き取り業者」への相談があります。 これは、通常の不動産会社が扱わないような、価値の低い土地や古家でも買い取る、あるいは引き取る業者です。
業者に依頼する場合、処分費用を支払う必要があるケースがありますが、費用対効果を計算し、今後数十年所有し続けた場合の税金や管理コストと、現在の処分費用を比較検討して判断することが賢明です。
まとめ|処分が合理的な判断になる時代
人口減少や少子高齢化が進むなか、維持費や固定資産税を支払い続けるだけの土地は、資産ではなく「負動産」となってしまうリスクがあります。 特に相続した土地を放置することは、将来的に子や孫へ負担を先送りすることになりかねません。
利益を求めることではなく「負の連鎖を断ち切る」という視点を持つことです。 不動産は、保有すること自体が正解とは限りません。 とくに、使う予定がない空き家や土地などは、放置のリスクを冷静に評価し、コストをかけてでも早期に手放すことが、これからの時代における賢明なリスク管理の1つといえるでしょう。


