相続によって、土地や空き家となった実家を取得することがあります。都市部やその近郊であれば、活用や売却が比較的容易ですが、地方や田舎の土地や空き家の場合は、簡単に手放せないケースも少なくありません。
中には、「国や自治体が不要な不動産を買い取ってくれないだろうか」と考えたことがある方もいるのではないでしょうか。
本記事では、国が土地を引き取る制度や、その制度の利用を積極的に検討すべきかどうかについて解説します。ぜひ参考にしてください。
空き家や土地の買取は国や市町村に依頼できるのか?
空き家や土地を、国や市町村が引き取り・買取する制度があるのか解説します。
相続土地国庫帰属制度によって、土地は引き取りが可能
結論からいうと、不要な土地を国が引き取る制度が存在しています。この制度は「相続土地国庫帰属制度」と呼ばれます。
この制度ができる以前は、不要な土地でも相続人の誰かが相続するしか方法がありませんでした。しかし、制度の導入によって、不要な土地を国に引き渡すという新たな選択肢が生まれました。不要な土地を相続した方にとって、有益な制度といえるでしょう。
ただし、準備や手続きに時間や多額の費用がかかる可能性があるため、別の選択肢も検討が必要です。空き家や土地を手放すための他の方法も合わせて考えるとよいでしょう。
相続土地国庫帰属制度の注意点
相続土地国庫帰属制度を利用する際には、多くの注意点があります。
とくに知っておきたいポイントは以下のとおりです。
- 相続などで土地の所有権や共有持分を取得した人が申請可能
- 建物は制度の対象外で、土地のみが対象であるため、空き家の場合は解体が必要
- 制度の利用には審査がある
- 一定の負担金を国に納める必要がある
相続土地国庫帰属制度を利用しても、申請が断られるケースが多く、引き取りに応じてもらえた場合でも、空き家の解体費用や負担金は自己負担となります。
相続土地国庫帰属制度を利用する際、多くの注意点が存在します。 とくに知っておきたいポイントをまとめると、以下のとおりです。
空き家を国に引き取ってもらうためには
先述したように、相続土地国庫帰属制度の対象は「土地」のみです。
建物(空き家)は引き取ってもらえないため、空き家の処分のためにこの制度を利用したい場合は、まず空き家を解体して更地にすることが前提条件となります。
国へ支払う負担金はいくら必要?
相続土地国庫帰属制度では、通常の取引のイメージとは異なり、土地の所有者が国に対して金銭を支払います。
地目が宅地の場合は「市街化区域」に指定されているかどうかと、土地の面積によって、負担金が異なります。
土地の種類 | 負担金 |
---|---|
市街化区域以外の場所 | 一律20万円 |
市街化区域(50㎡の土地) | 約41万円 |
市街化区域(100㎡の土地) | 約55万円 |
市街化区域(200㎡の土地) | 約80万円 |
不動産買取・仲介・国庫帰属の比較
空き家を売却する際、「少しでも値段がつけば…」と期待する方も多いでしょう。
しかし、地方にあり築年数が古く老朽化した空き家は、そもそも価値がつかないケースが多々あります。
不動産買取の場合
価値が付かない空き家を不動産買取業者に依頼して手放す場合、0円に近い価格で売却せざるを得ないことがあります。しかし、買取業者は仲介ではなく直接買い取るため、仲介手数料がかからない点がメリットです。
不動産仲介の場合
価値が付かない空き家を不動産仲介で売却する場合、0円に近い価格で売却したうえで、仲介手数料として約30万円がかかる可能性があります。一方で、不動産に直接買取してもらうより、高い価格で売却できたり、成約期間が短くなるケースが多いです。
国庫帰属制度の場合
価値が付かない空き家の処分のために国庫帰属制度を利用する場合、まず自費で空き家の解体費用を負担することになります。
さらに、解体後の更地が審査に通過すると、一定の負担金(その土地管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して算定した額)の支払いも必要になります。
それらを合わせると、30坪程度の木造住宅の場合で100万円から200万円程度の負担が予想されます。
空き家を処分する目的で国庫帰属制度を検討する前に、売却できそうな不動産業者を探してみることをおすすめします。
まとめ
本記事のまとめです。
- 「国」が「土地」を引き取る相続土地国庫帰属制度がある。
- 空き家を国が買取・引き取りする制度はない。
- 買空き家を手放すために相続土地国庫帰属制度を利用する場合、まずは空き家を解体して更地にする必要がある。
- その場合、空き家の解体費用と負担金によって100万円から200万円程度の費用発生が見込まれる(木造・30坪の場合)。
- 費用面を考慮すると、まずは国の制度の利用だけでなく、不動産会社への売却も含めて検討することを推奨します。
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