地方の空き家は、売却や賃貸が難しいうえに価値も付きにくいのが現実です。
そんな状況でも、所有している限り固定資産税の負担が続くという問題を抱えています。
そうなれば、所有者は寄付でもいいのでどうにか手放したいと思うでしょう。その際、相談先の1つとして思い浮かぶのが自治体ではないでしょうか。
本記事では、自治体に空き家や空き地を売却・寄付できるのかどうかを解説します。ぜひ参考にしてください。
基本的に、自治体は空き家の買取や寄付を受け入れない
結論からいうと、自治体が空き家や土地の買取や寄付を受け入れることは、基本的にありません。
空き家の買取・寄付を何でもかんでも受け入れていると、自治体の税収の多くを占める固定資産税(地域によって都市計画税)の税収が減るためです。
固定資産税と都市計画税を合わせると、市町村税全体のうち47%を占めるため、重要な財源なのです。
そのため、よほど自治体側がその空き家を取得するメリットが無い限り、買取や寄付を受け入れることはありません。
自治体に空き家の買取・寄付を申請すること自体は可能
見出しのとおり、自治体に空き家の買取や寄付を申請すること自体は可能です。
買取を依頼する方法
自治体に「土地買取希望申請書」を提出すれば、空き家の買取を依頼できます。
おもな記入事項は以下のとおりです。
- 所有する土地の地目・地番・面積など
- 土地の上に建っている建物の用途や面積
- 買取希望額
冒頭でお伝えしたとおり、実際に買い取ってもらえるケースはほとんどありません。
また、買取希望額を自ら設定することになりますが、高い価格を設定すると、なおさら買い取ってもらいにくくなります。
国が基準を設けている「路線価」をもとに、適正な売却価格を設定しましょう。
自治体が土地買取希望申請書を受理したあと、土地購入に関連する部署にて協議が行われ、購入が決定されれば、該当部署とのやりとりを経て売買契約が締結されます。
寄付を依頼する方法
自治体によって流れは若干異なることがありますが、おおむね次のような順番で空き家の寄付の依頼が進みます。
- 自治体の担当窓口に相談
- 自治体が土地や空き家の調査を行う(近隣トラブルや権利関係の問題がないかも含めて調査)
- 受け入れ可能と判断されれば、必要書類の提出
こちらも買取を依頼する時と同様、公共の施設としての利用価値がなければ、自治体が寄付を受け入れるケースは少ないです。
また、利用価値があると判断されるような空き家や土地は、通常の不動産に売却できる可能性があるため、まずは不動産業者を当たってみることをおすすめします。
土地を一定期間貸し出すことで、空き家の除却費が助成される地域もある
売却や寄付とは異なる方法ですが、一定期間、土地を自治体に無償で貸し出すことを条件に、空き家の解体費用の一部を補助する自治体があります。
たとえば、大阪市の「防災空地活用型除却費補助制度」は、防災対策を強化すべきと指定された地域にある土地であれば、5年以上無償で賃貸する契約を市と締結することで以下の補助が受けられます。
- 木造住宅の解体費用:戸建ては最大100万円・集合住宅は最大200万円
- 空き地の整備費用:最大120万円
(参照元:防災空地活用型除却費補助制度|大阪市)
相続した土地を自治体ではなく国が引き取る制度もある
相続した土地を国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」が、2023年4月27日から開始されました。
これにより、一定の要件を満たせば、相続した不要な土地を手放して国に帰属(所有権を移す)できるようになりました。
ただし、この制度の要件を満たす土地は限定的で、誰でも申請できるわけではありません。
また、この制度は土地のみが引き取りの対象となるため、承認を受けるためには空き家を解体して更地にする必要があります。
空き家の所有者は、家屋の解体費用と、引き渡しの際に発生する負担金を支払う必要があります。
そのため、空き家を手放すための方法としては現実的ではないといえます。
自治体が運営する空き家バンクは有効か?
自治体が運営する「空き家バンク」とは、空き家の売り手と買い手をマッチングさせるプラットフォームです。
空き家を売却・賃貸したい売り手が、自治体のウェブサイトに空き家の情報を掲載し、買いたい・借りたい人はウェブサイト上でニーズに合う空き家を探し、売買する仕組みです。
地方の空き家でもサイト上に掲載することは容易です。また、空き家バンクに登録すれば、空き家のリフォームに補助金がでる自治体もあるなどのメリットがあります。
注意点は、空き家バンクに登録すれば売れやすくなるわけではないことです。
自治体は不動産の仲介業は行えないので、介入できるのは買い手・借り手との日程などの調整までです。
売却手続きや交渉における専門的なサポートは不足する可能性があります。
また、田舎や利便性の低い地域にある空き家は需要が少なく、ただサイトに掲載するだけでは売却が難しい傾向があります。
上記の注意点を踏まえると、不動産に直接買い取ってもらうか、一般的な仲介を依頼するほうが、売却が成功しやすいかもしれません。
空き家バンクのメリット・デメリットを意識したうえで利用を検討しましょう。
自治体は空き家のリフォーム・解体は積極的に支援している
先述したとおり、自治体は空き家・空き家の買取や寄付を受け入れるケースは少ないです。
一方、多くの自治体は、以下のような補助金制度を設けています。
- 空き家の改修(リフォーム)に対する補助金
- 空き家の除却(解体・撤去)に対する補助金
- 空き家の取得(購入)に対する補助金
ただし、補助金額は上限があるため、補助金を受けても全額をまかなえるわけではありません。
また、それぞれの補助金には一定の条件があるため、前もって自治体のウェブサイトを確認しておきましょう。
空き家はまず買取業者へ相談
処分に困っている空き家を売りたい場合、まずは空き家の買取業者へ相談することをおすすめします。
先述したように、自治体は空き家・空き地の買取や寄付を承認することはまれです。
また、空き家バンクに掲載しても、広告活動ができないので買い手が見つかる保証はありません。
一方、買取業者の場合は、空き家に傷みや残置物があっても、現状のまま売却できることが魅力の1つです。
その理由は、空き家を買い取った後に自社でリフォーム・解体をおこない、物件の価値を向上するノウハウを保有しているからです。
また、仲介を挟まず買取業者が直接買い取るため、仲介手数料や、事前のリフォーム・解体費用をかけずに売却できます。
まとめ
本記事のまとめです。
- 自治体へ空き家の買取・寄付の申請自体は可能だが、基本的に承認されない。
- 空き家の処分のために相続土地国庫帰属制度を利用する場合、家屋の解体費用は自己負担になるので、現実的ではない。
- 自治体が運営する空き家バンクに掲載する方法もあるが、必ず買い手がつくわけではない。
- もっとも手出し費用を抑えて空き家を処分できる方法は、空き家の買取業者に売ること。
2024年時点では、自治体へ空き家・空き地を売却・寄付することは難しいです。
まずは、空き家の直接買取をおこなっている業者を探してみてはいかがでしょうか。
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