「借地権付き建物って本当に売れるの?」
不動産の売却を考える中で、こうした不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
結論として、「借地権付き建物は売れない」と言われることもありますが、実は工夫すればスムーズに売却を進められる場合があります。
この記事では、借地権と旧借地権の違いから、売れない理由、地主への売却を含む具体的な売却方法や価格相場を詳しく解説します。また、確実に高く売るための秘訣や裏技も紹介します。
借地権付き建物の売却をお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。
借地権付き建物とは?
借地権付き建物の売却を検討する前に、「借地権付き建物」とはどのような建物を指すのかについておさらいしておきましょう。
借地権付き建物とは、土地の所有権がなく、「借地権」という土地を借りる権利を持っている土地の上に建てられた建物のことです。
借地権付き建物の場合、土地を所有しているのは地主であり、借地権者(建物の所有者)は地主に地代(借地料)を支払う義務があります。
借地権は、「地主から借りた土地に建物を建てることができる権利」のことやで〜
借地権と旧借地権の違いについて
借地権には、現行の借地借家法による「5つの借地権」と、旧借地法による「旧法借地権」があります。
旧法借地権は、1992年(平成4年)8月の借地借家法施行以前に借りた土地に適用され、契約更新が可能です。
一方、現行法である借地借家法に基づく借地権には以下の5種類があります。
- 普通借地権
契約更新が可能。旧法借地権と同様に存続期間を延長できる。 - 一般定期借地権
用途の制限なし。契約終了時に更地にして返還する。 - 事業用定期借地権
事業用建物を建てるための借地権。契約終了時に更地にして返還する。 - 建物譲渡特約付借地権
契約終了時に建物付きで土地を返還する。 - 一時使用目的の借地権
工事の仮設事務所など、一時的利用を目的とする場合に設定する。
借地権は、それぞれ種類によって契約の存続期間や契約更新の有無が異なります。
種類 | 契約の存続期間 | 契約の更新 |
---|---|---|
普通借地権 | 30年以上 (1回目の更新:20年以上、2回目以降:10年以上) |
可能 |
一般定期借地権 | 50年以上 | 不可 |
事業用定期借地権 | 10年以上50年未満 | 不可 |
建物譲渡特約付借地権 | 30年以上 | 不可 |
一時使用目的の借地権 | 用途に応じて設定 | 不可 |
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借地権付き建物が売れないと言われる理由
借地権付き建物が売れないと言われる主な理由は下記の5つです。
- 借地契約更新の心配がある
- 土地活用や再建築の制限がある
- 資産価値が低い
- 金融機関からの融資を受けにくい
借地権付き建物が売れない理由①:地主の承諾が必要
借地権付き建物を売却するためには、事前に地主の承諾が必要になります。
さらに、承諾を得るために承諾料を支払わなければなりません。
地主からの承諾が得られない場合でも、裁判所の許可を得て売却できる場合があります。
借地権付き建物が売れない理由②:借地契約更新の心配がある
借地権付き建物を売却する際、借地権契約の残存期間が短くなるほど、売却が難しくなります。
とくに、契約更新ができない定期借地権(一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権)の場合、残存期間が大きな障害となり、売却は非常に困難です。
これらの借地権付き建物を売却する際は、契約の残存期間が長いほど買主の選択肢が広がり、より有利な条件で売却できる可能性が高まります。
- 残存期間が10年程度
売却が非常に難しくなる可能性が高い - 残存期間が20年程度
高齢夫婦など特定の層による購入が見込める - 残存期間が40年程度
比較的若い層にも購入を検討してもらえる可能性がある
借地権付き建物が売れない理由③:土地活用や再建築の制限
借地権付き建物は、借地権の種類によって建築や用途に制限が課される場合があります。
例えば、「事業用定期借地権」の場合、居住用としての建設や使用は認められていません。
土地の活用や再建築に制限が設けられている借地権付き建物は、買い手が限定されるため、売却が難しいケースがあります。
借地権付き建物が売れない理由④:資産価値が低い
借地権付き建物は、土地の所有権を持たないため、資産価値が低く評価されます。
このため、一般の不動産と比べて需要が少ない傾向があります。
さらに、借地契約の条件によって以下のような制約があることも、購入者にとっての大きな障壁となっています。
- 借地料の支払いが必要である。
- 増改築や建て替えの際に地主の許可が必要となる場合がある。
これらの要因が重なり、借地権付き建物の売却は一般的な不動産よりも難しくなる傾向があります。
借地権付き建物が売れない理由⑤:金融機関からの融資を受けにくい
借地権付き建物が売れにくい理由の一つに、金融機関からの融資を受けにくいことが挙げられます。主な理由は以下の通りです。
- 担保価値の低さ
土地が担保に含まれないため、融資リスクが高いと判断されます。 - 借地契約の不確実性
契約期間や更新条件が不明確な場合、融資を渋られることがあります。 - 借地料の負担
借地料が返済能力に影響すると見なされる場合があります。 - 地主との関係
契約条件や関係性が融資リスクに影響します。 - 市場の流動性の低さ
物件の流通性が低いため、売却が難しいと判断されます。
物件の購入希望者が銀行融資を受けられない場合、自己資金(キャッシュ)での購入が必要になります。このため、購入のハードルが高くなり、結果として売却も難しくなります。
銀行融資がつかない物件を売却するには、基本的には現金で購入してくれる買い手を見つける必要があり、幅広く宣伝したり価格調整も必要です。
銀行融資がつかない物件の売却するには、基本的には現金で購入してくれる買い手を見つけなアカンで、幅広く宣伝したり価格調整も必要やな。
地主へ売却するのはあり?借地権付き建物の売却方法
借地権付き建物を売却するには、主に下記の3つの売却方法があります。
- 地主へ借地権を売却
- 底地を買取りセットで売却
- 第三者へそのまま売却
借地権付き建物の売却方法①:地主へ借地権を売却
借地権付き建物を売却する際は、まず地主への売却を検討しましょう。
普通借地権契約では、借地権者が契約更新を希望すれば契約が継続されるため、地主が借地権を取り戻すのは難しい場合があります。
そのため、土地を自由に利用したいと考える地主が、借地権を買い戻す交渉に応じることもあります。
ただし、地主への売却時には、「建物を解体して更地にして返してほしい」と求められる場合があります。
その際は、解体費用の負担者を明確にし、売買契約書に記載しておくことでトラブルを防ぎましょう。
借地権付き建物の売却方法②:底地を買取りセットで売却
借地権付き建物を売却する際には、地主から底地を買い取った上で、借地権と一緒に売却する方法もあります。
この方法では、借地権と底地の両方を所有することで土地の完全な所有権が得られます。
土地の完全な所有権を持つことで、「土地+建物」という一般的な不動産として評価され価値が高まり、高値での売却が期待できます。
「借地権=土地を利用する権利」「底地=土地を所有する権利」のことやで。似て非なる権利やから、よく覚えておいてな〜!
借地権付き建物の売却方法③:第三者へそのまま売却
地主への売却や底地権の買い上げが難しい場合は、現状のままで借地権付き建物を買取してくれる第三者への売却を検討しましょう。
第三者に売却する場合、建物と借地権をセットで売却するのが基本です。
第三者への売却を進める際、以下のポイントにも注意が必要です。
- 地主からの承諾
売却には地主の承諾を得る必要があります。また、「譲渡承諾料」を支払う場合が一般的です。 - 売却価格とコスト
借地権付き建物は、通常の土地付き建物よりも売却価格が低くなる傾向があります。また、譲渡承諾料が売却コストを押し上げる要因になることも考慮しましょう。 - 買い主への説明義務
買い主には、地主との取り決め(契約更新条件や地代など)について正確に説明する必要があります。説明が不十分な場合、「契約不適合責任」を問われる可能性があり、契約解除や損害賠償請求を受けるリスクがあります。
借地権価格は、土地の更地評価額に国税庁が公表する「借地権割合」をかけて算出します。
契約内容に適合しない点があった場合に、売り主が負うべき責任を指します。この責任により、買い主は売買契約の解除や損害賠償を請求することができます。
借地権付き建物の売却価格相場
借地権付き一戸建ての売却価格相場は、土地付き一戸建てよりも安価である点が特徴です。
これは、土地の権利が借地権であるため、価格が抑えられるからです。
借地権の価値は、土地の所有権価格の30〜70%程度が一般的ですが、地域や契約条件、建物の状態によって異なります。
売却のメリットとして、地代の支払いが不要になることや、固定資産税の負担がなくなる点が挙げられます。
一方で、売却時には地主の承諾が必要であり、譲渡承諾料が発生する場合があります。
また、借地権付き物件は買い手が見つかりにくいことや、担保価値が低いために住宅ローンの審査が通りにくいといったデメリットも考慮が必要です。
価格や条件については、専門家に相談して適切に対応することが重要です。
借地権付き建物を確実に高く売るための秘訣
秘訣①:地主と良好な関係を築いておく
借地権付き建物を売却するには、地主からの承諾を得ることが大前提となります。
そのため、地主との関係性は良好に保っておく必要があります。
地主との良好な関係を保つ方法として、以下のような取り組みがあります。
- 地代の支払いを遅れずに行う
- 近所で会ったら必ず挨拶をする
- 年末年始には手土産を持って挨拶をする
- 増改築や使用目的の変更がある場合は、事前に相談する
地主との関係性が悪化してしまうと、売却の承諾を得られないだけでなく、今後の土地の利用や契約更新においてトラブルが生じる可能性があります。
日頃から地主との関係性を良好に保つために、誠意ある対応を心掛けましょう。
秘訣②:建物のメンテナンスを行っておく
借地権付き建物の売却価格の主な要素は「借地権」にあります。
ただし、建物自体に問題があり、リフォームや建て替えが必要な場合、その分売却価格が下がる可能性があります。
また、建物の管理を怠り老朽化が進むと、借地契約の義務違反となり、地主から契約解除を求められる可能性もあります。
さらに、借地契約の更新や建て替え時に、地主から条件の変更を提示されることも考えられます。
借地権付き建物を売却する場合、日頃のメンテナンスを怠らないことが重要です。
たとえ売却しない場合でも、メンテナンスをしないことで生じる不利益は非常に大きいです。
秘訣③:売却に時間をかけすぎない
「できるだけ高く売りたい」とこだわるあまり、建物の売却まで時間をかけてしまう方は少なくありません。
しかし、売却期間が長期化することによるデメリットは複数あります。
借地権付き建物を売却する際に、時間がかかることによるデメリットには以下のようなものがあります。
- 市場変動のリスク
売却に時間がかかる間に不動産市場の状況が変化し、当初予定していたよりも低い価格でしか売却できなくなる可能性があります。 - 維持費用の増加
売却が完了するまでの間、固定資産税や地代、建物の維持管理費などのコストが継続して発生します。 - 物件の劣化
時間が経過するにつれて建物がさらに老朽化し、修繕やリフォーム費用など追加コストが必要になる場合があります。 - 契約条件の変更リスク
売却が長引く間に、法令の改正や借地契約の更新時期が訪れ、契約条件が変更されるリスクがあります。 - 精神的ストレス
長期にわたる売却活動は、売主にとって精神的な負担やストレスを増大させる要因となります。
借地権付き建物は権利関係が複雑であり、一般的な所有権物件に比べて購入を検討する人が限られます。
そのため、そもそも買い手を見つけるのに時間がかかることがありますので、需要と価格を考慮した適切な価格設定が必要になります。
また、売却に課題を感じた場合は、不動産仲介業者や弁護士、税理士などの専門家に積極的に相談することをおすすめします。
秘訣④:専門の優良買取業者を利用する
不動産の売却と聞くと、不動産仲介業者を通じて買い手を探すことが一般的です。
しかし、借地権付き建物の売却では、複雑な権利関係や規制が障壁となり、買取価格が低くなったり、買い手がなかなか見つからないことがあります。
そのため、借地権付き建物を売却する際には、一般的な不動産会社が敬遠しがちな、いわゆる「訳あり物件」を専門的に取り扱う不動産業者に相談することをおすすめします。
結局は担当者次第なところもあるから、頼りにならないと感じたら別の業者を探すことをおすすめするで〜。
【裏技】借地権付き建物は売れない?:まとめ
借地権付き建物の売却は可能です。
借地権には「現行の借地権」と「旧法借地権」の2種類があります。
現行の借地権には、契約更新が可能な「普通借地権」と、契約更新が原則として認められない「定期借地権」が含まれます。また、定期借地権にはさらに3つの種類が存在します。
借地権付き建物の種類によっては、建物の活用方法や再建築への規制があり、一般的な不動産と比べて売却までに時間がかかる可能性が高いです。
借地権付き建物には、さまざまな売却手段があります。
まずは、自身の物件状況と権利関係を考慮して、売却を進める必要がありますので、専門家の意見を伺いながら慎重に進めていくことをおすすめします。